ある方の“最期”に寄り添って

 

~思いを大切にするサポートをめざす~

 

 

 

                菅原千佳

 

 

 

社会福祉士として独立、仕事を始めて、この4月で満5年になる。県内ではほとんどいない独立型社会福祉士としてやっていけるのかと思ったが、多くの人に助けられ、ありがたいという思いでいっぱいである。

 

 仕事は、介護職員初任者研修などの講師や、中学校で、悩みを抱える生徒の相談にのるかたわら、認知症や知的障がい、精神障がいのある方で判断能力が低下し、自分がどう暮らしていくかわからない方々(被後見人さん)がその人らしく生活できるようサポートする。

 

具体的には、どこに住み、どんなサービスを受けるかを本人に代わって契約する。預貯金や自宅などの財産管理も重要な仕事である。余暇をどう過ごすかなど衣食住に含まれない多くのことにも関わりがある。

 

受け持っている被後見人さんは10人足らずだが、問いかけても返事がない人や「わがらね」をくりかえす人、こちらの問いかけに返事をしても数分後には忘れてしまう人もいる。身寄りのない人も多いが、家族がいても介護してもらえないばかりか、その人の年金を持って行かれれ、借金をさせられてしまった人もいる。他にも、こだわりが強く何年も前のできごとへの疑問を繰り返す人もいる。そのつどその思いに向き合い何度も説明する。

 

先月、ひとりの被後見人さんが亡くなった。認知症を患い数年介護施設にお世話になっていた。後見人(私)とは一年余りの短いつきあいで、何度か救急搬送され危ない状態に陥ったが、ついに力尽き還らぬひととなった。

 

遠方に住む親族とは複雑な事情があったようで、入院などの連絡をするたびに昔のできごとの『怒り』をぶつけられたが、聴くことしかできなかった。亡くなったことを告げても「行けない」と言われた。
 お金が全くないため、前にお世話になった葬儀屋さんを頼り全面的に助けてもらった。ご住職さんに窮状を話したら、お布施は心配しなくていいと、あたたかいことばをいただいた。数ヵ月だけ担当してくれたケアマネさんからは、新品の毛布やねまきをもらい、からだを包んであげることができたし、棺を運ぶときは、社会福祉士仲間が文字通り、力を貸してくれた。お世話になったホームの施設長さんは火葬場で手を合わせてくれた。独りでお骨を拾うことを覚悟したが、被災地支援活動の仲間が駆けつけ、ともに拾ってくれた。ありがたかった。

 

多くの人の助けで見送ることができた。

 

このことがきっかけで『終活』の大切さを学んだ。人生を終えるまで考えるべきことは、きりがないほど多い。「延命治療は必要ない」とか「認知症になったらグループホームに入りたい」など、ふだんから周りの人に伝えていればこそ実現できることもあるだろうが、そこまで準備している人は少ない。

 

からだが不自由になったら、意識がなくなったら、延命治療は、葬儀は、相続は・・・。今は自分で判断し行動できるが、いずれ体力がおとろえてだれかの力を必要とするときがくる。だれがしてくれるのだろう・・・。そんな不安を抱えている人がいたら、一つずつ相談し不安を取り除くことでその人の役に立てればと思っている。

 

これからも人生の大先輩の最期に立ち会うことになる。そのひとが望むであろう暮らしや最期を実現できるよう精進していきたい。

 

     

 

 

 

  飽海地区高等学校退職教職員協議会会報

 

2018年春号)に掲載されたものです。